室内撮影でほとんどの場合に必要になってくるのが、機材を使った光です。
『光』と言ってもライト類だけではなく、レフ板はもちろんのこと、周りを囲む全てのものが、物撮りには大きく影響して来るのです。それこそ部屋の環境であったり、極端に言えば『三脚』でさえも一つの光の要素という考え方になるのです。
質と需要のバランス
先日テレビを観ていたら、料理を作り撮影して、SNS配信してアクセスを集めているという方がいました。そこで綺麗に撮る技術紹介をしていたので参考にしてみました。
・真上から撮る。
・部屋の電気を消して、窓からの外光を利用する。
・必ずレフ板を利用する。
椅子の上から、真上ショットをしている様子が放送されていました。
『なるほど』となったのは、写真の仕上がりです。確かに綺麗に光が周り、これならばSNSで見たら、ついついシェアしたくなることでしょう。
こういうところに需要があるんだなぁと感心しました。
本も出版し、売れているようでした。
私の場合、物撮りは『ストロボ光』から入ったので、色々と悩まされました。
現在では『蛍光灯光』も取り入れ、極力スピーディーに撮影できる環境へ移行しましたが、やはり商品によっては光源の選択は欠かせません。
しかしこうやって成功されている方を見ると、気付くことが色々あります。
それは『ポイントを押さえている』ということです。
最終目標が、SNSならば特に画質はこだわる必要はありません。
とにかく『雰囲気重視』であるわけですから、余計なことに時間は掛けないのです。
そもそも写真自体、作業終了に行う『記念撮影』みたいな位置付けなのです。
以前クライアントから、同様の提案があって戸惑ったことがありました。
『ネット掲載なので適当で』というわけです。
この感じって逆に難しいんですよね。
柔軟対応できない自分に、腹が立ちました。
コストとの兼ね合いもありますが、商品撮影の最高の状態とは何なのかを追い求めていただけに、微妙な気持ちになったわけです。
質と雰囲気のバランス
雰囲気重視でなくてもいい場合もあります。
それは『質を上げる』ということが、欠かすことのできないテーマとなります。
しかし『質の中には、雰囲気がないのか』となれば、それは違います。
質も雰囲気の一つだからです。
物撮りに対して、質問を受ける事があります。
逆に指導を受ける場合もあります。
どちらの立場でも同じですが『ある一定水準以上は説明が難しい』のです。
色は無数にあり、質感も無数にあります。
そのバランスや見え方・見せ方を考え、安全な光・危険な光・万能光・専門光など目的に合ったものを、その都度選んで行かなくてはならないわけです。
しかしその仕上がりは『経験者のみぞ知る』ようはやってみないと分からない分野なのです。それに撮影の環境や道具など、場所によって全く一貫性がありませんから、全てを同じにできるはずがないわけです。
どうしても問題点をクリアしようと、ついついライト類は増えてしまいますが、考えれば考えるほど分からなくなってしまいます。
しかし最終的に『結局はシンプルが良い』となるわけです。
シンプルなライティングとは?
クライアントと仕事をする場合、予算や要求により仕上がりも変わってきてしまいます。
クライアント・・・イメージの要求
カメラマン・・・現実の提供
その先にある物は、やはり相違なのです。
ではその溝を埋めるには、どうしたらいいのでしょうか?
答えは簡単です。『柔らかい光を使う』ということです。
冒頭で書いた通り、影の薄い写真は万能です。
種明かしをすれば、人は『HDR』的な写真に弱いのです。
これは悪く言うと『だまし』なのかも知れません。
それで済んでしまえば、それで良いわけです。ただ忘れてはいけないのが、その光は技術的には『スタートライン』だということです。
そこへいかに味付けをするかで、写真はグッと変わります。
・やるか、やらないか
・できるけど、やらないのか
・できないから、やらないのか
予算に応じて選ぶことができれば、それで良いのだと思います。
逆の発想
実は答えはもう一つありました。それは『硬い光』です。
これに気付いたのは、過去にクライアントに言われた一言がキッカケでした。
散々『ああでもない、こうでもない』と、あっちを立てればこっちが立たないような感じでかき回された挙句、最終的に『強めの一灯ストロボ』を提示して来たのです。
何かで見たのでしょうね。
『今まで散々やった打ち合わせは何だったんだ』と腹も立ちました。
要は『雰囲気重視』ということです。
しかしそこで気付いたのが『撮影うんぬんは関係ない』ということです。
いつも無理難題の提示をされて『それはできないんだよという説明』ばかりをして来たように思います。
そんなことをせずに、できるパターンの提示をすれば良かったんですけどね。
しかし、やってみて分かったことですから、やらなければ分からなかったわけです。
少々お金も掛かりますが、物撮りって、やっぱり素敵です。