写真論

『太陽は1つ』という考え方が写真をもっとシンプルにする

150120-6

当り前ですが『太陽は1つ』です。そりゃ、2個も3個も昇って来たら、かなりの衝撃でしょう。しかし忙しく暮していると、そんなことすらも考えません。他にも『当り前過ぎて、考えもしないこと』というのがいくつかあると思います。

太陽は1つ

さて、屋外で撮影する際、特に気にするのは『逆光』でしょうか。それを補うために、ストロボを焚くことがあると思います。これは確立された手段であり、多くの人々がその術を知っています。

しかし屋内で行う撮影で、特に『物撮り』などは特殊と考えられている場合が多いようで『むずかしそう』とか『よく分からない』という声を耳にすることが少なくありません。

きっとそれは、テレビや雑誌などで見る多灯撮影シーンの印象が強いからではないでしょうか。しかし屋外も屋内も『太陽は1つ』と考えれば、それほど差はないのです。

屋外と屋内の条件の違い

あえて違いをあげて行くとすれば、それは光量の違いでしょうか。お天気にもよりますが、外はかなり明るいと言えます。特に雲のない時の太陽は直視することができないほど強烈なのです。しかし家の中で明るい物と言えば、部屋の蛍光灯ぐらいでしょう。直視すると眩しいとはいえ、見ていられないほどではありません。

実際に露出計で計測してみると、その差は歴然としています。屋内の光量は、屋外に例えると『夕方の暗くなり始め』ぐらいの明るさしかないのです。

反射の中で生活している

544

生活の中で反射から受ける恩恵は、かなりの割合を占めます。極端に言えば全ての物が黒ければ、私達は何も見ることはできません。それぞれに独自の色があるから形や質感を判別することができるのです。

例えば部屋で電気をつけた場合、人で言えば直接の光源が当たる部分しか見えないはずです。頭部や肩などが一番光を多く受けることになります。

しかし、電気を付けると同時に壁や家具などにも光が当たり、それが反射して光源となり、反射が反射してサイドや下からも光を受けることとなります。よってシルエットや色が浮かび上がるというわけです。

この説明により、光量に違いがあったとしても『屋外も屋内も同じ条件』であるということが説明できます。むしろ光量が変化しない屋内の方が簡単と言えるでしょう。

物撮りは1灯あれば十分

150120-3

実は屋内撮影は1灯あればそれなりに仕上げることができます。シンプルで分かりやすいですよね。しかし、被写体をより魅力的に見せるために、ついつい欲が出て来て多灯撮影に手を出すわけです。

例えば1灯の場合は影が強く出ます。それを薄くするために影を照らそうとするわけです。そうなれば他にも影響が出て、ますます撮影がむずかしくなるのです。

そう言った観点から言えば『暗過ぎる部分を補う』という意味で使うのが正解です。白レフで済むのであればそれが最善。それでも足りなければここで初めて、2灯目を投入するという順番です。

上記の画像は2灯撮影です。左後部から強めのライトで照射しています。狙いは右手前に出る影を強調したかったのです。そうなると、アクセサリー部分が黒く潰れてしまうのでレフ版で補光しました。しかし光量が足りなかったため、やむを得ず2灯目を使ったというわけです。

なぜ2灯以上のライティングが必要なのか

理想とするライティングは、確実に1灯です。理由は自然に写るからです。フラッシュを焚いたがために不自然になってしまった写真を見たことはないでしょうか?

多灯というのは、雰囲気を壊す要素をかなり多く持ち合わせているのです。しかし、背景が暗過ぎるとか、アクセントを入れたいという場合もあるでしょう。そうなれば、その要求の数だけライトが増えて行くのです。その際注意する点は、その前までに入れたライトの利点を壊さないということです。

もう一つは、被写体の大きさにあります。例えば人物撮影で、頭から足下まで光を回したい場合、人物以上の大きさのライトが必要になります。もちろん市販されてはいますが、あまり大きいと色々困ってしまいます。

その場合は上半身と下半身を分けて考え、同じ角度から2灯当てるということをします。それに『輪郭も強調したい』とか『アゴ下の影が気になる』など、様々な要求が出て来ます。それを1つ1つクリアして行くことで7灯8灯となり、ますます素人さんを混乱させてしまうわけです。

写真は引き算ではありません

845

誰が言い出したか知りませんが『写真は引き算』という言葉をとにかく発言したがる人がいます。
ハッキリ言ってこれは間違いです。

元々は構図の中に主役と脇役を決め、主役が引立つようにその他を差し引いて行くという考え方から来るようです。そのことについて異論はありませんが、全てにおいて引き算と言い切るところに問題があるのです。

写真はメイクと同じ、足りない部分を補うのです。
だから『足し算であり引き算』なのです。

どちらの要素も持ち合わせているということは、あえて言う必要などないのです。

照射角度は好みではない

セミナーなどでの解説を聞いていると『照射角度は色々試して、好みのを見付けて下さいね』と言う場合があります。結構幅広い表現ですが、要は『検証を繰り返して下さい』ということです。

照射角度とは、言ってしまえば科学の世界。
その真実はものすごく狭い範囲にあります。

理論を元に試すわけで、理論を知らなければまず辿り付けない複雑なものです。
さすがにこれを一言で説明することはできません。
それなりの経験と知識がなければ、最善のものを選ぶことはできないでしょう。
特に反射物の撮影では必須事項となります。

しかし、分かってしまえば撮影があまりにも簡単に思えて来るのです。
それは短時間のセッティングにつながり、ポートレイトではモデルさんを待たせずに済むということ。
結果、撮影が順調に進み、素敵な表情を撮影することができるのです。

なぜ、この光なのか。
なぜ、この角度なのか。

とにかく、シンプルに考えることが重要です。

-写真論
-

© 2024 MiyabixPhoto